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院長講座「5歳から11歳のコロナワクチン」

2022-03-03

3月から、いよいよ我が国でも、5歳から11歳の、新型コロナワクチン(以下小児用コロナワクチン)が始まることになりました。アメリカの新型コロナウイルス感染症と、小児のコロナワクチンのデーターをご紹介いたします。

小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、日本でも小児の感染例が多くみられるようになってきましたが、アメリカでは感染が急拡大し、昨年11月の段階で、子どもの感染者数は630万人、入院が2万4000人以上、うち3分の1は、集中治療室での治療が、必要でした。感染後、特に小児に起こる多系統炎症性症候群(MIS-C、色々な臓器が炎症をおこしてしまう症候群)を、起こした子供(主に10歳以上)は、5000人以上でした。死亡者は、10月時点で約600名となっています。入院した小児例は1000人に4人、死亡した割合は10000人に1人となります。また、重症例、死亡例のほとんどは、基礎疾患のある子供であると、報告されています。

一方、日本での小児用コロナワクチンは、ファイザー-BioNTech社製の小児用ワクチンが用いられます。このワクチンは、アメリカでは、これまでに870万回以上の接種が行われ、このワクチンの安全性を、リアルワールドデータで検討した結果が、米疾病対策センター(CDC)発行「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」12月31日号に、掲載されています。平均年齢は8歳で、大半(97.6%)は、深刻なものではなく、注射部位の痛みや、一過性の倦怠感、頭痛などが主でした。深刻な有害事象は100件の報告がありました。その100件の平均年齢は、9歳で、最も多い深刻な有害事象は、発熱の29件で、続いて嘔吐が21件、心筋炎が15件であり、発疹や痙攣なども報告されていました。心筋炎はいずれも軽症で、特別な治療を必要とせず軽快しています。ワクチン接種で、医療を必要とした割合は、報告事例の1.1%で、入院に至ったのは0.02%でした。死亡は5歳と6歳の女児の2例が報告されていますが、いずれもワクチン接種前の健康状態が、脆弱で、ワクチン接種と死亡の因果関係を示すデータは、ありませんでした。

アメリカのデーターですが、10000人に1人の子供がCOVID-19で死亡していることは大きく、ワクチンへの期待が大きくなります。しかし、日本ではまだ小児例での死亡はなく、人種差など何らかの要因でこの差があるかもしれませんが、ワクチンの必要性に疑問が残ります。少なからず、上記のデーターから基礎疾患、悪化因子のある児は、ワクチン接種が必要と考えて良いと思います。

こどものクリニック中山医院 院長

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