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ワクチンの同時接種について思う事

2017-05-23

今年・昨年と東京都で複数のワクチン液を1つのシリンジに混ぜてお子さんに接種していた事案が問題となりました。各ワクチンの添付文書には、「他のワクチンと混合して接種してはならない」という記載があります。その理由は、複数のワクチンを混ぜると、混ぜないで接種した場合と比較して、ワクチンの各成分に対する免疫がきちんとつくのか、強い副反応がでることはないのかなどが明確になっていないからです。

実際に、かつて海外でヒブワクチンをDPTワクチンと1本のシリンジに混ぜて接種した際に、ヒブワクチンの免疫原性が低下したという研究報告があります。

同時接種とは同じ受診機会に身体の異なる部位に複数のワクチンを接種することであって、1本のシリンジに複数のワクチン液を混ぜることではありません。同時接種については、ワクチン液を混ぜる場合と異なり、有効性や安全性において問題がないという情報が国内外で集積されています。

子どもがどんな順番で感染症にかかるのか予測はできません。予防のためには複数の病気に対する免疫をできるだけ早期につけることが望ましく、同時接種はそのための手段の1つです。確かに、複数の箇所に注射針を刺されるので、子どもは何度も痛がります。その負担を減らしてあげたいという気持ちは誰でも同じです。しかし、有効性や安全性が未確立な接種をお勧めすることはできません。したがって、複数のワクチンを混ぜて接種することはできません。

子どもたちの痛みという負担を軽減しようという思いは、小児科医すべてが思っている事です。諸外国では、日本の4種混合ワクチンに、Hibワクチン、B型肝炎ワクチンの加わった6種混合ワクチンが一般的です。早く国内でも諸外国のような安全性有効性の確立されている6種、7種、8種という混合ワクチンが使えるようになることを日々祈っています。

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