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同時接種は日本だけの問題?

2012-06-14

先日、面白い記事を見つけましたので、ご紹介します。

ワクチンの世界的権威である、ペンシルベニア大学のプロトキン名誉教授に、「海外ではいつから同時接種がおこなわれているのか、導入時に問題はなかったのか」という点について少したずねてみたのですが、「問題は同時接種をするかどうかではない、安全なワクチンが使えるかどうかだ」という一言で終わり。正直、「なぜそんなことを聞くのだろう」という表情でした。プロトキン氏はこれまでに数多くのワクチン開発・導入に携ってきたワクチンの権威ですから、なにかしら過去に、どこかの地域で、接種するワクチンの種類が増えたことによる同時接種が問題になったことがあれば、知っているかもしれない、そう思って聞いてみたのですが、実のところ同時接種には全く興味がなかったのです。しかし同氏のこうした反応も、今になって、上記のような日本の同時接種問題の経緯を考えてみたら当然のこととわかります。あくまで日本でだけ起きている非常に特殊な問題で、世界では、同時接種など問題ですらないからです。

といったものです。

日本はワクチン後進国という汚名を返上すべく、この数年、矢継ぎ早に新しいワクチンを承認してきました。しかしそれは、生まれて2ヶ月から数ヶ月のうちに打たねばならないワクチンが何種類も増えたことを意味します。やれ風邪だなんだで法定の間隔を保ちながら順調に予防接種を受け続けるのはもともと困難ですが、任意接種のワクチンまできちんと全て(任意接種・定期接種の区別は、ワクチンの重要性を反映してはいません)、しかるべき時期までに打ち終わろうとするなら(そうしないと効果が得られず意味がありません)、もはや同時接種無しには達成し得ない状況です。それなのに、「同時接種をするか、しないか」なんていう、欧米はもちろんアフリカを始めとする途上国諸国でも議論にすらならない部分に足を取られているうちに適切な接種機会を逃してしまったら、そしてワクチンにて予防できる病気(VPD)に感染してしまったら、それこそ本末転倒です。

予防接種を打つ機会が1回1回とてもラッキーで貴重なアフリカ諸国にしてみれば、「予防接種は1種類ずつバラバラに何回にも分けて、何度も足を運んだほうがいい」なんていう考え方は、のんきで贅沢な議論に映ってしまうかもしれません。

 

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