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~中山通信~ 「新学期が始まり、1か月になりました」

2024-04-26

新学期が始まり、1ヶ月になりました。特に保育園や幼稚園に入った子どもはよく風邪をひくようになったと思います。

保育園や幼稚園は子どもたちの集団生活の場です。これまで集団生活をしていなかったお子さんが入園すると、多くの病原体にさらされ、毎週のように風邪をもらってきて熱を出すお子さんも少なくありません。これから仕事を頑張ろうと思った矢先に、「熱が出たのでお迎えを」という園からの連絡が重なると、保護者も心が折れそうになるかもしれません。また、「自分の復職が早かったから子どもに負担をかけているのでは」と悩んだり、「こんなに何度も風邪をひくなんて、うちの子は免疫が弱い病気でもあるのだろうか」と心配になったりするかもしれません。でも、実はよくあることです。

世界的に支持されているLancetという医学雑誌で2003年に発表された論文で、1960年から1980年に世界で発表された風邪に関する論文をまとめたもので、年齢が小さいほど、頻回に風邪を引くことが証明されています。また、この論文では、1~2歳のお子さんが最も風邪を引く回数が多く、3~4歳、5~9歳と、成長に従って風邪をひく回数は減っていくこともわかっています。これは我々小児科医の実感としても納得できるものです。(1)

そう言われても、保育園デビューしてから、頻繁に熱を出すお子さんのケアをしながら、こういった状況がいつまで続くのか、途方に暮れる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、1827名のお子さんを2年間フォローアップし、風邪症状や病欠日数と保育施設入所との関連を調べた、フィンランドの研究をご紹介したいと思います。この研究では、月平均の、病欠日数がピークとなったのは保育園入所2カ月の時点で、その後減少し、9カ月を過ぎるころには落ち着いたと報告しています。(2)  我々小児科医の実感としても、おおむね入園後1年くらいすると風邪を繰り返すパターンも落ち着いて来る印象があり、この研究結果も納得できるものです。

別のカナダの研究では、就学前(2歳半より前)にグループ保育を始めたこどもは、当初は気道感染症や中耳炎の発症頻度が上がるものの、小学校に入ってからの感染症罹患はむしろ下がることが報告されています(3)。 就学前に風邪をひくことはデメリットばかりではないのです。

子どももいつかは集団生活を経験しないといけません。保育園や幼稚園に入園し、風邪をひくのは、必要な免疫をつけるための通過儀礼とも言えます。決して保護者の判断が悪かったとご自身を責める必要はありませんし、通っているうちに、回数も減ってきますのでご安心いただければと思います。

 

参考文献

1.Heikkinen T, Järvinen A. The common cold. Lancet. 2003;361(9351):51-9.

2.Schuez-Havupalo L, Toivonen L,et.al.. Daycare attendance and respiratory tract infections: a prospective birth cohort study. BMJ Open. 2017;7(9):e014635.

3.Côté SM, Petitclerc A, Raynault MF, Xu Q, Falissard B, Boivin M, et al. Short- and long-term risk of infections as a function of group child care attendance: an 8-year population-based study. Arch Pediatr Adolesc Med. 2010;164(12):1132-7.

 

中山医院 院長 中山豊明

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