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~ 中山通信 ~ 「麻疹(はしか)について」

2024-03-25
  1. 麻疹(はしか)の国内発生が近年問題となり、先日も報道がありました。これは、コロナ禍の影響での、麻疹ワクチン(現在はMRワクチン)の接種率の低下により、社会の免疫の低下からきています。特に麻疹は感染力が強いので、地域での麻疹の発生を防ぐには、地域全体の予防接種率が95%を超えないと難しいと言われています。現在、日本でも、地域の接種率が95%以下の地域が多く、この状況が続く限り、また同様に、国内発生が起こると考えられます。このことは、世界も同様に起こっており、ロンドンや、ニューヨークでの麻疹の流行も見られています。

 

WHOは、新型コロナ感染症の影響や紛争の増加により、麻疹(はしか)の予防接種率が数年にわたり世界中で低下し続けた結果、2022年は、世界の麻疹の患者数の増加と、死亡者数が43%増加したことを報告しました。この報告書によると、2022年の麻疹患者数は900万人、死亡者数は13万6,000人とされ、そのほとんどは小児でした。報告書では、大規模または破壊的な麻疹のアウトブレイクが発生した国の数は、2022年には37カ国に増えたことも指摘されていて、国を地域ごとに見ると、最も多かったのは、アフリカで28カ国、次いで、東地中海地域6カ国、東南アジア2カ国、ヨーロッパ1カ国の順でした。

麻疹は予防接種を2回受けることで予防可能な疾患ですが、麻疹ワクチン未接種の小児の数は3300万人(初回接種を受けていない小児が約2200万人、2回目の接種を受けていない小児が約1100万人)に上ると推定されていて、2022年の世界全体でのワクチン接種率は、初回が83%、2回目が74%であり、集団免疫を獲得し、地域社会を麻疹のアウトブレイクから守るのに必要な2回目接種率(95%)を大きく下回っています。特に、低所得国では、麻疹ワクチンの初回接種率が、2019年から2021年の間に71%から67%へ低下し、2022年にはさらに低下して66%と、経時的に低下し続けています。

さらに、麻疹ワクチンの、初回接種を受けなかった2200万人の小児の半数以上が、わずか10カ国に住んでいることも示されました。それらの国は、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、パキスタン、アンゴラ、フィリピン、インドネシア、ブラジル、マダガスカルでした。(W H O HealthDay News 2023年11月16日)

 

今回の麻疹の国内発生は、予想できたことで、起こるべきことで起きたとも言えます。麻疹の危険を地域から無くすには、このような危険性を国が皆さんにしっかりと啓蒙することが必要と私は思います。

中山医院 院長 中山豊明

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