水痘ワクチンの定期接種化
みなさんはあまり関心がないことかと思われますが、大阪大学名誉教授の高橋理明先生が昨年末にお亡くなりになりました。高橋先生は世界で初めて水痘(みずぼうそう)のワクチンをお作りになられたことで知られています。世界中の多くの国で広く使われ、米国では1995年より定期接種化され患者さんが激減しているそうです。ニューヨークタイムズには年間400万人の患者、11000人の入院、100-150名の死者を出していたこの疾患も高橋先生のおかげで過去のものになったと大きく報じられました。世界中で報じられた高橋先生の死去ですが、本家の日本ではほとんど報道もされませんでした。この差はちょっと残念です。ただし米国よりはかなり遅ればせながらその水痘ワクチンがようやくこの10月から定期接種化されます。それも2回接種とのことで、本家ながら20年遅れではありますが大変喜ばしいことと思います。
英国の有名な医学雑誌「LANCET」に、この1月の終わりに水痘ワクチンの2回接種の有効性に関する論文が載りました。これによると、水痘感染歴のない生後12-22カ月の小児5803人を対象に、水痘ワクチンの発症予防効果を無作為化比較試験で評価。水痘の発症および中-重度化の予防における有効率は、麻疹・ムンプス・風疹・水痘ワクチン(MMRV)2回接種群で94.9%および99.5%、MMR+1価水痘ワクチン各1回接種群で65.4%および90.7%だったということです。
先天性風疹症候群
妊婦検診の血液検査に風疹の抗体を調べる検査が入っていますが、なぜだかご存知でしょうか。これは先天性風疹症候群(母体が風疹になると生まれる赤ちゃんに奇形症候群が起こるもの)の危険があるかないかを調べています。
昨年の風疹の流行は、不幸な結果につながったことが国立感染症研究所から発表されました。例年の我が国での先天性風疹症候群の数は年間3〜4人でしたが、昨年は32人の発生が報告されました。これは過去の最多であった10名の3倍以上というショッキングなものでした。しかも今年に入りすでに4人の発生が報告されており、この1ヶ月で例年の数に並んでしまいました。このままでは今年は昨年以上の数が発生してしまうことも予想されます。
同じく先ほど厚労省の予防接種関係の会議の資料で日本人1歳~49歳男女の風疹感受性者(つまり、風疹に対する免疫が無くて、罹る危険のある人)の推計数は、745万9617人と記されていました。このような状態で再び風疹が流行すれば、先天性風疹症候群が同様に発生する可能性が大きいのです。
昨年、富士市ではお父さんになる男性とおかあさんになる女性に風疹の予防接種の補助をしていました。来年も続けてもらうよう医師会の予防接種委員会では市にお願いをしています。風疹の予防接種を受けましょう。
先天性風疹症候群は、他の国でも重要な問題ですので、過去に他の先進国から「日本は、はしかの世界最大の輸出国」と言われたのと同様に。東京オリンピックに行くのに「風疹に注意して」と言われないためにも市町村単位ではなく、国としてしっかりと本気の対策をしてもらいたいと思っています。
言葉の大切さ
小児肺炎球菌ワクチンの追加接種
11月1日に、小児肺炎球菌ワクチンが、それまで使用されていた7種類の肺炎球菌の感染が予防できるのもの(7価肺炎球菌ワクチン:プレベナー)から、それに6種類の肺炎球菌を加え13種類の肺炎球菌の感染が予防できるもの(プレベナー13)に変わりました。
肺炎球菌という菌は90種類以上あり、ワクチンはすべての肺炎球菌に有効ではないのですが、7種類だけにしか効かない「7価肺炎球菌ワクチン」でも、肺炎球菌による髄膜炎を75%減らすことが出来ました。しかし、今度は、ワクチンに含まれていない侵襲性肺炎球菌による髄膜炎が相対的に増えてしまいました。そこで、さらに、髄膜炎を起こす頻度の高い6種類を加え、13種類の肺炎球菌を入れた13価肺炎球菌ワクチン(プレベナー13)が作られたわけです。
7価ワクチンで途中まで受けているお子さんは、残りを13価ワクチンで受ければ、新たに加えられた6種類に対しても効果があることは、既にプレベナー13に切り替わっている諸外国での成績でわかっていますので、13価ワクチンを最初から打ち直す必要はありませんし、現に11月1日以降は13価ワクチンを接種しています。
既に4回の接種が終わっている幼児はどうするのか・・・・が問題になる訳ですが、13価ワクチンでの追加接種1回で、加えられた6種類の肺炎球菌に対する効果は確認されているので、追加で受けるなら1回だけ注射することになります。
諸外国では、このような接種も定期接種として公費負担で打てるのですが、予防接種後進国の日本は認めてもらえませんでした。しかし、諸外国の例をみても有効性はわかっていますので、是非自費でも接種をお勧めします。
12月です。
12月に入りました。今年も残るところあと1ヶ月です。
クリニックの中も徐々にクリスマスの模様になっています。
とても楽しいですね。写真の飾り、どこにあるでしょう?
さがしてみてね。