~ 栄養士講座 ~ 「 おやつの時間を活用しよう 」
皆さんはおやつの時間に、どんなものを食べていますか。
市販のお菓子だけではなく、おやつの時間を、
「苦手な野菜を食べる」 「足りない栄養素を補給する」
機会にしてみてください。例えば、野菜をすりおろしたり、みじん切りにして、パンケーキにしてみるのも良いですね。粉チーズを生地に混ぜて焼くと、味付けに変化が出ます。ホットケーキミックスと耐熱容器があれば、電子レンジで野菜の蒸しパンも作れます。苦手な野菜でも、おやつであれば食べる場合もありますし、生地を混ぜるお手伝いをしてもらうと、自分で作ったという意識が出てきて普段より食べてくれることもあります。
また、食事量が少ない場合や、スポーツなどで活動量が多い場合には、必要な栄養素を確保するために、おやつを活用します。捕食ともいい、体をつくる栄養を摂ることを考えます。エネルギーが足りない時には、おにぎりやサンドイッチなど、炭水化物が摂れるものを選んだり、1日の食事量が少ない時には、たんぱく質が摂れるように、乳製品のヨーグルトや牛乳、卵を使った料理(カステラやフレンチトースト)などを選んだりします。
とはいえ、お菓子類は、心の栄養としても大事なので、量と食べる時間を決めておやつの時間を楽しみましょう。
メイプル薬局管理栄養士 佐野文美
~ 中山通信 ~ 「溶連菌感染症とは?」
溶連菌感染症は、「溶血性連鎖球菌」という細菌の感染によって、引き起こされる病気です。「溶血性連鎖球菌」には、いくつかの種類が存在しますが、特に感染症を起こす頻度が高く、一般によく知られているのが「A群溶血性連鎖球菌」です。
この菌が、のどに感染し、咽頭痛、痒みのある発疹、発熱などを引き起こします。特に強い咽頭痛や、これらの症状などから疑われた場合、のどの検査をして診断を確定します。
成人での感染も見られますが、小児の、とりわけ学童期が最も感染しやすい時期になります。治療としては、抗生剤(特にペニシリン)がよく効くので、内服により1、2日で軽快しますが、抗生剤の内服は長く内服する必要があります(ペニシリンでは、10日間)。これは溶連菌には、腎炎やリウマチ熱といった合併症があり、10日間の内服でこれらの合併症が、ほぼ予防できるからです。
感染経路は、飛沫感染ですので、一般的な気道感染症と同様に、うがい、手洗いなどで予防します。
中山医院 院長 中山豊明
~中山通信~ 「新学期が始まり、1か月になりました」
新学期が始まり、1ヶ月になりました。特に保育園や幼稚園に入った子どもはよく風邪をひくようになったと思います。
保育園や幼稚園は子どもたちの集団生活の場です。これまで集団生活をしていなかったお子さんが入園すると、多くの病原体にさらされ、毎週のように風邪をもらってきて熱を出すお子さんも少なくありません。これから仕事を頑張ろうと思った矢先に、「熱が出たのでお迎えを」という園からの連絡が重なると、保護者も心が折れそうになるかもしれません。また、「自分の復職が早かったから子どもに負担をかけているのでは」と悩んだり、「こんなに何度も風邪をひくなんて、うちの子は免疫が弱い病気でもあるのだろうか」と心配になったりするかもしれません。でも、実はよくあることです。
世界的に支持されているLancetという医学雑誌で2003年に発表された論文で、1960年から1980年に世界で発表された風邪に関する論文をまとめたもので、年齢が小さいほど、頻回に風邪を引くことが証明されています。また、この論文では、1~2歳のお子さんが最も風邪を引く回数が多く、3~4歳、5~9歳と、成長に従って風邪をひく回数は減っていくこともわかっています。これは我々小児科医の実感としても納得できるものです。(1)
そう言われても、保育園デビューしてから、頻繁に熱を出すお子さんのケアをしながら、こういった状況がいつまで続くのか、途方に暮れる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、1827名のお子さんを2年間フォローアップし、風邪症状や病欠日数と保育施設入所との関連を調べた、フィンランドの研究をご紹介したいと思います。この研究では、月平均の、病欠日数がピークとなったのは保育園入所2カ月の時点で、その後減少し、9カ月を過ぎるころには落ち着いたと報告しています。(2) 我々小児科医の実感としても、おおむね入園後1年くらいすると風邪を繰り返すパターンも落ち着いて来る印象があり、この研究結果も納得できるものです。
別のカナダの研究では、就学前(2歳半より前)にグループ保育を始めたこどもは、当初は気道感染症や中耳炎の発症頻度が上がるものの、小学校に入ってからの感染症罹患はむしろ下がることが報告されています(3)。 就学前に風邪をひくことはデメリットばかりではないのです。
子どももいつかは集団生活を経験しないといけません。保育園や幼稚園に入園し、風邪をひくのは、必要な免疫をつけるための通過儀礼とも言えます。決して保護者の判断が悪かったとご自身を責める必要はありませんし、通っているうちに、回数も減ってきますのでご安心いただければと思います。
参考文献
1.Heikkinen T, Järvinen A. The common cold. Lancet. 2003;361(9351):51-9.
2.Schuez-Havupalo L, Toivonen L,et.al.. Daycare attendance and respiratory tract infections: a prospective birth cohort study. BMJ Open. 2017;7(9):e014635.
3.Côté SM, Petitclerc A, Raynault MF, Xu Q, Falissard B, Boivin M, et al. Short- and long-term risk of infections as a function of group child care attendance: an 8-year population-based study. Arch Pediatr Adolesc Med. 2010;164(12):1132-7.
中山医院 院長 中山豊明
~ 栄養士講座 ~ 「 睡眠時間の見直しをしましょう 」
入園、入学、進級などで生活リズムが変わりやすい時期です。こどもたちの睡眠時間について考えたことはありますか。
適切な睡眠は心身の休養と脳と身体を成長させる役割があります。睡眠時間が不足すると、
肥満のリスクが高くなる
抑うつ傾向が強くなる
生活の質(QOL)が低下する
ことが分かっています。生活習慣に関連する睡眠不足を防止する観点から、1~2歳児は11~14時間、3~5歳児は10~13時間、小学生は9~12時間、中学・高校生は8~10時間を参考に睡眠時間を確保することが推奨されています。成長期である高校生までは、成人よりも長い睡眠時間が必要ですが、一般に成長時期が進むにつれ、睡眠時間の確保が難しくなることもあります。もちろん個人差はありますが、十分な睡眠時間が確保できるように保護者が援助することが望ましいでしょう。思春期が始まる頃から、睡眠と覚醒のリズムが後退し、睡眠の導入に関わるホルモン(メラトニン)の分泌開始が遅れることで夜寝る時間が遅くなり、朝起きるのが難しくなる傾向がみられます。部活動や勉強、デジタル機器の使用などで睡眠不足になりやすくなります。朝は日光を十分に浴びて、朝食をしっかり食べること、座りっぱなしの時間を短くして運動をすること、デジタル機器は寝室に持ち込まないことなど、予防対策をして、夜更かし朝寝坊のような状態にならないように気をつけましょうね。
メイプル薬局管理栄養士 佐野 文美
~ 中山通信 ~ 「麻疹(はしか)について」
- 麻疹(はしか)の国内発生が近年問題となり、先日も報道がありました。これは、コロナ禍の影響での、麻疹ワクチン(現在はMRワクチン)の接種率の低下により、社会の免疫の低下からきています。特に麻疹は感染力が強いので、地域での麻疹の発生を防ぐには、地域全体の予防接種率が95%を超えないと難しいと言われています。現在、日本でも、地域の接種率が95%以下の地域が多く、この状況が続く限り、また同様に、国内発生が起こると考えられます。このことは、世界も同様に起こっており、ロンドンや、ニューヨークでの麻疹の流行も見られています。
WHOは、新型コロナ感染症の影響や紛争の増加により、麻疹(はしか)の予防接種率が数年にわたり世界中で低下し続けた結果、2022年は、世界の麻疹の患者数の増加と、死亡者数が43%増加したことを報告しました。この報告書によると、2022年の麻疹患者数は900万人、死亡者数は13万6,000人とされ、そのほとんどは小児でした。報告書では、大規模または破壊的な麻疹のアウトブレイクが発生した国の数は、2022年には37カ国に増えたことも指摘されていて、国を地域ごとに見ると、最も多かったのは、アフリカで28カ国、次いで、東地中海地域6カ国、東南アジア2カ国、ヨーロッパ1カ国の順でした。
麻疹は予防接種を2回受けることで予防可能な疾患ですが、麻疹ワクチン未接種の小児の数は3300万人(初回接種を受けていない小児が約2200万人、2回目の接種を受けていない小児が約1100万人)に上ると推定されていて、2022年の世界全体でのワクチン接種率は、初回が83%、2回目が74%であり、集団免疫を獲得し、地域社会を麻疹のアウトブレイクから守るのに必要な2回目接種率(95%)を大きく下回っています。特に、低所得国では、麻疹ワクチンの初回接種率が、2019年から2021年の間に71%から67%へ低下し、2022年にはさらに低下して66%と、経時的に低下し続けています。
さらに、麻疹ワクチンの、初回接種を受けなかった2200万人の小児の半数以上が、わずか10カ国に住んでいることも示されました。それらの国は、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、パキスタン、アンゴラ、フィリピン、インドネシア、ブラジル、マダガスカルでした。(W H O HealthDay News 2023年11月16日)
今回の麻疹の国内発生は、予想できたことで、起こるべきことで起きたとも言えます。麻疹の危険を地域から無くすには、このような危険性を国が皆さんにしっかりと啓蒙することが必要と私は思います。
中山医院 院長 中山豊明