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~ 中山通信 ~ 「 こどもの薬の飲ませ方 」

2024年07月06日

小児科医をやっていてよくきかれる質問の一つにこどもが薬を飲んでくれないというのがあります。そう考えてみると、薬を上手に飲んでくれるこどもの方が少ない印象があります。私自身、自分の子供が小さい時に薬を飲ませるのに苦労しました。

「苦い」「においがある」「舌触りが悪い」「量が多い」などの理由から薬を嫌っていたように感じました。ですから、子供の好みや成長に応じた工夫が大切だと思います。私の経験談も踏まえてお話しします。

「なぜ薬を飲まなくてはならないの?」という疑問から薬を飲まなくなることもあるので、言い聞かせてわかる年齢のお子さんには、薬を飲む理由をわかるように説明してあげることも大切です。また、なんとか飲ませようとすると、逆にその切羽詰まった空気を感じ取って、お子さんが緊張してしまいます。そこで、薬は「病気を治すために必要なもの」として、子どもが「つらいもの」という印象を持たないよう、楽しい雰囲気で飲ませましょう。「治そうね」「元気になろうね」などと声をかけることも効果的です。服用できたら十分に誉め、自信を持たせるようにしましょう。

いくつもお薬を飲ませる時には、出来るだけ別々に飲ませた方が、味がおかしくなりにくいです。なにか食べてからでないと薬を飲ませてはいけないと、信じている方もおられると思いますが、小児科で普通に処方される薬は、胃を荒らしたり、食事によって効果に差が出たりすることはありません。特別に医師の指示がないかぎり、食前でも大丈夫です。おなかのすいている食前の方がスムーズに飲んでくれたり、吐いてしまったりすることは少ないです。それでも、飲めない場合もあります。薬は、そのまま白湯や水に溶かしたりして服用することが理想ですが、何かに混ぜて飲ませることも一つの方法です。一般的に、練乳・水飴などに混ぜて服薬させます。特にチョコレート・ココアと混ぜると薬の味や苦味がわかりにくくなります。(チョコレートはチョコレート風味ではなく、実際のカカオを使用したものでないと上手くいかないと思います。)また、氷やアイスクリームは、舌を冷やし、一時的に味を感じにくくします。服用直後には湯冷ましやお茶を飲ませ、口内に薬が残らない状態にしましょう。

国立生育医療センターの薬剤師さんが、具体的な薬の種類と推奨する混ぜるもの、混ぜてはいけないものを情報提供しています。参考にしてください。

https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/medicine/210330.html

とはいえ、もう十分に色々混ぜて与えてみたけれど、どれもダメだったという方もいると思います。私もそうでした。でも、意外と試していないものもあると思います。実際にそのようなお母さんとお話しすると、試していないものは多くありました。味噌汁、カレーなどがその一例です。

薬だけではなく、こどもは色々なことで上手くいきませんが、根気強く続けていくことが大切だと考えています。

中山医院 院長 中山豊明

~栄養士講座~「ビタミンとミネラルの摂取について」

2024年06月25日

野菜を食べることは、私たちが健康に元気に生活を送るために大切なことで、それはおもにビタミン、ミネラル、食物繊維の摂取源になるからです。ビタミンやミネラルは、肉や魚に含まれるたんぱく質や、米や穀類に含まれる炭水化物など、体をつくる、エネルギーになる栄養素がうまく働くように補助する役割があります。ビタミンC、カリウム、食物繊維は野菜から摂取する割合が多いと言われていますので、野菜不足だと影響が出やすくなります。

大人で1日350g以上の野菜の摂取が推奨されていますが、実際の摂取量は280g前後約70g足りていないとの報告があります。特に、20~40代の若者や中年層に不足しており、これは朝食の欠食や外食の回数が増えたことによると考えられています。 70gの野菜がどのくらいかというと、トマト1/2個または玉ねぎ1/4個くらいです。こどもの頃から野菜を食べる習慣を持って、不足しないようにしたいですね。

とはいえ、苦手であまり食べられないこどももいます。切り方や調理方法によって、独特な食感やにおいが和らぐこともあります。例えば、生野菜ではなく短時間加熱をしてみたり、下茹でをしてから炒めてみたりすると食べやすくなることがあります

工夫をしながら毎日の食事に取り入れましょう。

 

メイプル薬局管理栄養士 佐野文美

 

~ 栄養士講座 ~ 「 おやつの時間を活用しよう 」

2024年05月25日

皆さんはおやつの時間に、どんなものを食べていますか。

市販のお菓子だけではなく、おやつの時間を、

「苦手な野菜を食べる」    「足りない栄養素を補給する」

機会にしてみてください。例えば、野菜をすりおろしたり、みじん切りにして、パンケーキにしてみるのも良いですね。粉チーズを生地に混ぜて焼くと、味付けに変化が出ます。ホットケーキミックスと耐熱容器があれば、電子レンジで野菜の蒸しパンも作れます。苦手な野菜でも、おやつであれば食べる場合もありますし、生地を混ぜるお手伝いをしてもらうと、自分で作ったという意識が出てきて普段より食べてくれることもあります。

 

また、食事量が少ない場合や、スポーツなどで活動量が多い場合には、必要な栄養素を確保するために、おやつを活用します。捕食ともいい、体をつくる栄養を摂ることを考えます。エネルギーが足りない時には、おにぎりやサンドイッチなど、炭水化物が摂れるものを選んだり、1日の食事量が少ない時には、たんぱく質が摂れるように、乳製品のヨーグルトや牛乳、卵を使った料理(カステラやフレンチトースト)などを選んだりします。

 

とはいえ、お菓子類は、心の栄養としても大事なので、量と食べる時間を決めておやつの時間を楽しみましょう。

 

メイプル薬局管理栄養士 佐野文美

~ 中山通信 ~ 「溶連菌感染症とは?」

溶連菌感染症は、「溶血性連鎖球菌」という細菌の感染によって、引き起こされる病気です。「溶血性連鎖球菌」には、いくつかの種類が存在しますが、特に感染症を起こす頻度が高く、一般によく知られているのが「A群溶血性連鎖球菌」です。

この菌が、のどに感染し、咽頭痛、痒みのある発疹、発熱などを引き起こします。特に強い咽頭痛や、これらの症状などから疑われた場合、のどの検査をして診断を確定します。

 

成人での感染も見られますが、小児の、とりわけ学童期が最も感染しやすい時期になります。治療としては、抗生剤(特にペニシリン)がよく効くので、内服により1、2日で軽快しますが、抗生剤の内服は長く内服する必要があります(ペニシリンでは、10日間)。これは溶連菌には、腎炎やリウマチ熱といった合併症があり、10日間の内服でこれらの合併症が、ほぼ予防できるからです。

 

感染経路は、飛沫感染ですので、一般的な気道感染症と同様に、うがい、手洗いなどで予防します。

 

中山医院 院長 中山豊明

~中山通信~ 「新学期が始まり、1か月になりました」

2024年04月26日

新学期が始まり、1ヶ月になりました。特に保育園や幼稚園に入った子どもはよく風邪をひくようになったと思います。

保育園や幼稚園は子どもたちの集団生活の場です。これまで集団生活をしていなかったお子さんが入園すると、多くの病原体にさらされ、毎週のように風邪をもらってきて熱を出すお子さんも少なくありません。これから仕事を頑張ろうと思った矢先に、「熱が出たのでお迎えを」という園からの連絡が重なると、保護者も心が折れそうになるかもしれません。また、「自分の復職が早かったから子どもに負担をかけているのでは」と悩んだり、「こんなに何度も風邪をひくなんて、うちの子は免疫が弱い病気でもあるのだろうか」と心配になったりするかもしれません。でも、実はよくあることです。

世界的に支持されているLancetという医学雑誌で2003年に発表された論文で、1960年から1980年に世界で発表された風邪に関する論文をまとめたもので、年齢が小さいほど、頻回に風邪を引くことが証明されています。また、この論文では、1~2歳のお子さんが最も風邪を引く回数が多く、3~4歳、5~9歳と、成長に従って風邪をひく回数は減っていくこともわかっています。これは我々小児科医の実感としても納得できるものです。(1)

そう言われても、保育園デビューしてから、頻繁に熱を出すお子さんのケアをしながら、こういった状況がいつまで続くのか、途方に暮れる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、1827名のお子さんを2年間フォローアップし、風邪症状や病欠日数と保育施設入所との関連を調べた、フィンランドの研究をご紹介したいと思います。この研究では、月平均の、病欠日数がピークとなったのは保育園入所2カ月の時点で、その後減少し、9カ月を過ぎるころには落ち着いたと報告しています。(2)  我々小児科医の実感としても、おおむね入園後1年くらいすると風邪を繰り返すパターンも落ち着いて来る印象があり、この研究結果も納得できるものです。

別のカナダの研究では、就学前(2歳半より前)にグループ保育を始めたこどもは、当初は気道感染症や中耳炎の発症頻度が上がるものの、小学校に入ってからの感染症罹患はむしろ下がることが報告されています(3)。 就学前に風邪をひくことはデメリットばかりではないのです。

子どももいつかは集団生活を経験しないといけません。保育園や幼稚園に入園し、風邪をひくのは、必要な免疫をつけるための通過儀礼とも言えます。決して保護者の判断が悪かったとご自身を責める必要はありませんし、通っているうちに、回数も減ってきますのでご安心いただければと思います。

 

参考文献

1.Heikkinen T, Järvinen A. The common cold. Lancet. 2003;361(9351):51-9.

2.Schuez-Havupalo L, Toivonen L,et.al.. Daycare attendance and respiratory tract infections: a prospective birth cohort study. BMJ Open. 2017;7(9):e014635.

3.Côté SM, Petitclerc A, Raynault MF, Xu Q, Falissard B, Boivin M, et al. Short- and long-term risk of infections as a function of group child care attendance: an 8-year population-based study. Arch Pediatr Adolesc Med. 2010;164(12):1132-7.

 

中山医院 院長 中山豊明

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